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「散歩する侵略者」 [舞台]

イキウメの「散歩する侵略者」を見てきました。

再演らしいのですが、初演は見ていません。

作・演出の前川知大君が、ウィークエンドシャッフル(タマフル)のリスナーでいてくれて、それで縁があり、いつもこまめに上演情報を送ってくれます。ありがたや、ありがたや。

これまで、僕はイキウメの公演を4~5本見ましたが、その中でも今回の作品は、なるほど再演が希望されるのがよく分かるくらい、一番出来がいいと思いました。


ネタばれします。注意。未見の方は、ここでストップ! 












もうちょっと










ネタばれ開始。

侵略者は、本当に最初から散歩をしています。

侵略者は、宇宙人のようでもあり、観念のようでもあります。

侵略者は、一番伝わりやすいので自分たちを宇宙人だと呼びます。

侵略者は、何を侵略するのでしょうか。それは、人の概念です。

侵略者は、侵略者となった瞬間から、もともとの人間として生きた知識や経験のファイルを頭の中に持っていますが、概念というもの(実感と言い換えてもいい)を持っていないために、知識や経験が何なのかがわかりません。

その概念を人から奪っていくという、侵略者なのです。

侵略者に、学習する能力があればいいのですが、侵略者は学習の能力がありません。人から奪取することでしか概念を学べないのです。学習なら、教えた人間から概念が消えることはありませんが、奪取という方法をとるので、概念をうばわれた人は、完全に奪取されてしまうため、そもそも失ったことすら気がつきません。言葉として聞いたことは有っても、概念としてとらえられていた能力を奪われてしまうので、その一部の実感は完全に破壊されてしまいます。
奪われた瞬間、奪われた人は一様に涙を流すのですが、自分がどうして涙を流すのかがわかりません。
なぜなら、自分が何を失ったのかが、分からないからです。

なんて残酷なんでしょうか。

たとえば、家族・親族という概念が奪われた人間は、家族・親族を実感できません。
他者と自分の区別という概念を奪われた人間は、共感もできないし、孤高にもなれません。ただ、曖昧に他者と自分をない交ぜにしかできない。

他者と共感できない。漠然と世の中にはびこる最近のムード。そんなことが伝わってきました。

ラスト、侵略者はそれと知らず、ある大変なものを奪取します。そして、その瞬間その概念を実感し、感動し、共感しようとします。あまりにも大きく、思っていた以上に大切なその概念に感動し、共感しようとします。ところが、奪取した相手はその概念が消えていますから、共感しようがないのです。いくら共感しようと侵略者が思っても、奪取された相手は決してわかってくれないのです。
そして、このシーンが残酷なのは、奪取される側は、奪取されたあと自分が、相手と共感できなくなるということを知っているという事なのです。共感できることは決してない。しかし、伝えたい。少なくとも、伝えられれば、最低限、いい。奪取される側の、そのモチベーションに感動してしまいました。

侵略者は、初めて、自分が概念を奪取するという行為が、どれほどの重大事なのかを実感します。

あまりにも残酷なこの結末をみて、僕は劇場で、前川君に、「もう、まったく。残酷なこと書くんだからぁ」と言っちゃいました。

まだ今日が初日なので、お時間のある方は、ごらんください。

いつものイキウメよりは、笑いは少ないんだけど、ずーんと考えさせられます。








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コメント 2

ペップ

『散歩する侵略者』観てきました!
で、ようやくブログ全文を読む事が出来ました(笑)。
たしかにこれは予備知識は入れない方が良いですね。

本当に素晴らしかったです!
クライマックスは場内の殆どから鼻をすする音。
私も思い出すだけでこみ上げてくるものがあります。

映画観るだけでも大変なのに、
これからまた追いかける対象が増えそうです。
せのちんさん、責任とってくださいよ(笑)。
ホントに良い舞台をご紹介いただき、ありがとうございました!
by ペップ (2011-06-05 01:02) 

妹尾匡夫

では、責任をとって、なるべくいい芝居を書くように努力して邁進するようにします。
芝居の世界へようこそ!
by 妹尾匡夫 (2011-06-06 09:59) 

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