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「何かの美味しいキッサ店」台本一部紹介 [舞台]

シアターまあ第三回公演「何かの美味しいキッサ店」は、1月の24日から、中野の「ザ・ポケット」で上演されます。

その稽古が行われているわけですが、いつもいつも言われることに、「どんな内容なのかわからないので不安」という声があります。そこで、今回は、特別に、台本を発表します。太っ腹なのか、無謀なのか。

これを読んで、どんな世界なのか、どんな登場人物が登場するのかを予想してください。

これを読んでも、まだまだ本番の舞台は楽しめますぞ。

上演台本 「何かの美味しいキッサ店」


   作 妹尾匡夫

   キャスト

○尾上(おのうえ)さくら~河本千明(26)
   キッサ憩のマスター春太郎の妹。商店街のブティックに勤めている。
○秋吉みゆき~上杉美浩(26)
   さくらの幼なじみ。近所の麻雀秋吉の娘。競馬などの博才は天下一品。色っぽい目線の持ち主。
○荒木健二~ 出口哲也(26)
   大学8年生。関西出身。真理子の甥。いい加減に大学に通っていたので8年生になってしまっている。
○川原奈々~ 四宮由佳(23)
   健二の大学の後輩。健二にあこがれているが、相手にされてないのが悔しい。スーパー竹下で経理の仕事をしている。
○松山高道~ 中村哲人(33)
   松山電器の若旦那。しょっちゅうキッサ憩で時間をつぶしている。週末にはいつも競馬をやっているが、全く当たらない。
○竹下昭夫~ 小磯勝弥(43)
   弱小スーパー竹下の社長。春太郎とは小学校の先輩後輩。新入社員の奈々に頭が上がらない。
○尾上真理子~丸山優子(43)
   キッサ憩のマスター~春太郎の妻。気っ風のいい性格。荒木健二の叔母。
○尾上春太郎~佐藤伸之(44)
   キッサ憩のマスター。コーヒーの入れ方だけは天下一品。店が繁盛しなくてもあまり気にしていない。




○第一場

   明かり入るとキッサ憩が浮かび上がる。木目を多様した全体的に茶色いイメージの昔ながらのキッサ店。
   正面向こうには入り口があり、その入り口の脇には大きな窓があり、ガラス越しにその向こうの通りを歩く人間が見える。
   窓の向こうは通りであるが、路地のようで、その向こうには塀がある。表通りには面していないキッサ店だ。
   店はカウンターと、テーブル席が二つ三つ。カウンターにはとまり木が三つぐらい。テーブル席の椅子はビニールレザーの古くさい椅子。
   テーブル席の脇には、マガジンラックがおかれていて、新聞や週刊誌が置かれている。
   カウンターではコーヒーしか入れず、店の奥に通じる出入り口がある。出入り口の向こうには簡単な厨房があるらしい。料理などは奥で作る。
   その出入り口には階段も併設してあり、自宅らしき二階に登れる。(階段は奥にあり、昇り降りの音が聞こえなくてもかまわない)
   それとは別に、トイレへの出入り口のドアがどこかにある。
   
   午前十時頃。
   春太郎、奥から登場してくる。
   店の電気をつけ、エプロンをかける。
   店の入り口の鍵を開け、ちょっと外に出て外に置かれているポスト(みえなくてもいい)から新聞を取り出してくる。通常新聞とスポーツ新聞の2紙。
   それをもってカウンターに戻り、そこで二つの新聞の背中をホッチキスでパチンパチンと二カ所ずつとめる。
   それを折り畳んで、マガジンラックに一紙を入れる。
   自分はカウンターでスポーツ新聞を広げて読み始める。

春太郎「さあ、我がベイスターズは今年はどうなんだ? 中畑はないと思うけどな」

   しばらく新聞を見つめていたが、急に、

春太郎「オレはDeNAとは絶対に呼ばんぞ!」

   春太郎、ページをめくって、

春太郎「稀勢の里なあ… 新大関で…(その頃の状況で)」

   奥の方で、笛吹ケトルの音がする。
   春太郎、奥に引っ込んで、ケトルをもってくる。
   昨日のコーヒーが入ったままのドリップを出し、ケトルのお湯をゆっくりと入れていく。その間も、半分は目がスポーツ紙に注がれている。
   コーヒーを落として、それをカップに入れ、飲みながらスポーツ紙を読む春太郎。
   そこに松山入ってくる。

松山 「おはよう。春太郎さん」
春太郎「おはよう。なんだ松山電器か」
松山 「なんだはないでしょう」
春太郎「また朝からさぼりか」
松山 「どうせ客こないもん。午前中に客が来たのは夏が最後。オレにも一杯頂戴」
春太郎「出涸らしだ」
松山 「いいいい」
春太郎「よくないよ。うちは生半可なコーヒーは客に出さない」
松山 「さすが春太郎さん、拘ってるねえ」
春太郎「ただ… お前なら別にいいか。客じゃないし」
松山 「ええ、オレ客じゃない?」
春太郎「客というのはね、きちんとお金払って飲む人ね。お前はずいぶんツケたまってるぞ」
松山 「きっついなあ」

   春太郎、残りのコーヒーをカップに注いで、松山に出しながら、

春太郎「飲み屋でツケってあるけどさ、キッサ店でツケってあんまりないぞ」
松山 「そこがこのキッサ憩のいいところなんですよ。いよっ! 商店街の人格者! 尾上春太郎!」
春太郎「オレが人格者ねえ… 営業とか回ったら? 駅の向こうにマンションできただろ」
松山 「ま、そうなんだけどね」
春太郎「なんだっけ、パラボラアンテナとか? 売れるんじゃない?」
松山 「スカパーね? それがさ、聞いたらあそこ、マンション全体でケーブル入ってるんだって。出る幕無し。あきらめちゃった」
春太郎「商売っ気ないなあ、松山電器危ないんじゃない?」
松山 「ホントホント」
春太郎「よくつぶれないよ」
松山 「ね」
春太郎「呑気だなぁ。ひとごとかよ」
松山 「うちより、キッサ憩は大丈夫なの?」
春太郎「オレの代まではなんとかな。でも、オレの代で多分終わりだ。継いでくれる子供もいないし」
松山 「ねえ、キッサ憩はモーニングとかやらないの?」
春太郎「オレ、モーニングって嫌いなんだ」
松山 「どうして?」
春太郎「あのな。個人のキッサ店がモーニングって、なぜやるか知ってるか?」
松山 「知らない。なんで?」
春太郎「夕べの出涸らしでもうひと商売できるからなんだよ」
松山 「ああそうなんだ」
春太郎「オレは出涸らしでひと商売なんて、ごめんだ」
松山 「(コーヒーちょっと飲んで)うまっ。十分うまいじゃん」
春太郎「やっぱお前は客じゃないわ。それがうまいなんて言ってるようじゃ」
松山 「そうかなあ」
春太郎「嫁もなかなかこないはずだ」
松山 「関係ないでしょう」
春太郎「本物を見抜く目がないんだ。うん」
松山 「えーっ?」
春太郎「というか、本人が本物になってない」
松山 「きっついなあ。新聞いい? 競馬ンとこだけ」
春太郎「ああ、もう綴じちゃった」
松山 「ちぇっ」
春太郎「どうせ負けるんだ。やめとけ競馬なんか」
松山 「でも当たるときもあるかもしれないじゃん」
春太郎「どうせなら、みゆきちゃんに予想してもらえ」
松山 「みゆきちゃんて、向かいの雀荘秋吉の?」
春太郎「そう。看板娘。あの子の博才は大変なもんだぞ」

   そこに真理子入ってくる。

松山 「あ、真理子さん」
真理子「おっ。松山電器」
松山 「おはようございます」
真理子「お前は働け。そしてツケを払え」
松山 「あいかわらず直球だなあ、真理子さんは」
真理子「うちは慈善事業でお前にコーヒー飲ませてるんじゃないぞ」
松山 「ま、これはほら、夕べの出涸らしらしいから」
真理子「お前からは、出涸らしでも通常料金を取る。ツケとくからな」
松山 「そんなあ」

   そこにさくらが降りてくる。

さくら「おはよ」
春太郎「おはよう」
真理子「おはよ」
松山 「おはよう」
さくら「あ、松山電器」
松山 「みんなそう呼ぶのね」
さくら「働いたら?」
松山 「それも言うのね」
さくら「お兄ちゃん。あたしにも一杯もらえる?」

   春太郎、出涸らしにケトルでコーヒーを足しながら。

春太郎「なんだ、徹夜か」
さくら「まあね」
真理子「なに、さくらちゃん徹夜したの?」
さくら「うん」
真理子「あ、言ってた例の?」
春太郎「なんだ、例のって」
さくら「カーネーションってやってんじゃん」
春太郎「カーネーション?」
松山 「朝ドラでしょ? うちのテレビで毎日映ってるよ」
真理子「ホントに電気屋か? 日本中のテレビで映ってるんだよ」
春太郎「カーネーションがどうした」
さくら「あれでさ、型紙で生地だけ切って、あとは縫えばいいだけ、簡単に洋服ができるって商品が飛ぶように売れる場面があってさ」
春太郎「なんなんだ、それ」
真理子「つまり、キットってやつよ。途中まで出来上がってて、あと縫うのは自分でやる。ミシンで。半分手作り気分」
さくら「店長があれをまねしてやってみたら、結構人気になってさ。お客さんの注文も一杯来て。おかげであたしは夜通しチョキチョキ」
春太郎「そんなものが売れるのか」
さくら「ね」
松山 「ねえ! キッサ憩でもそういうのやれば?」
真理子「そういうの?」
松山 「コーヒーがもう挽いてあってさ、一杯ずつ小分けにしてあってさ、お湯を注げば一杯できあがりってヤツ」

   冷たい目でみんなが見るので、

松山 「…とか」
さくら「もうあるよ」
松山 「あ、あるの」
真理子「働け。そして世間を知れ。そして幾分か恥を知れ」

   そこに入ってくるみゆき。

みゆき「おはようございます」
春太郎「あ、みゆきちゃん。おはよう」
みゆき「春太郎さん、コーヒー4つ作って。店にもってくから」
春太郎「ほいよ。おい松山電器。競馬ならっとけ」
松山 「ええ? (みゆきに)お、はよう」
みゆき「ああ松山電器」
松山 「はい」
みゆき「働かないの?」
松山 「働きます」
さくら「おはようみゆき」
みゆき「おはようさくら。なんか眠そう」
さくら「徹夜」
みゆき「さくらも? あたしも」
真理子「なに、みゆきちゃんも徹夜?」
みゆき「徹夜麻雀」
春太郎「徹夜麻雀。今どきめずらしいな」
みゆき「うちは結構あるんだよ。途中からメンバー足らなくてあたしが相手してたの」
真理子「結果は?」

   みゆき、Vサイン。

みゆき「ねこそぎ、巻き上げてやりましたよ。サラリーマンの小遣い」
春太郎「やっぱり、みゆきちゃんの博才はすごいな」
みゆき「まあ、麻雀はそんなでもないんだけど。勝つコツがあるんです」
さくら「勝つコツ?」
みゆき「そう。こっちがリーチしてるときに、相手が捨て牌悩んでたりするでしょ? その時すかさず、流し目で相手の目をみてやるわけ。すると、相手はポーッとしちゃって、捨てちゃいけない牌を捨てちゃうの。で、ロン!」
さくら「あんたまだそんなことしてるの? この子高校のときに編み出したんだよね、あの目」
春太郎「へえ、どんな目? オレにしてみて」

   みゆき、春太郎に目線を送る。

春太郎「なるほど。これはすごいわ。色っぽい」
みゆき「しかもね、この方法で勝つと、相手はニコニコしながら負け分を払ってくれるんです」
松山 「でも、オレはサ。なんかそういうの卑怯だと思うな」
春太郎「みゆきちゃん。(ポーズで松山電器にも)」

   みゆき、松山に目線を送る。

松山 「ボク、なんでも捨てちゃう」
真理子「働け」
春太郎「みゆきちゃん。コーヒーできたよ」
みゆき「ありがとう。お金は空いたカップと一緒に持ってくる」
春太郎「ん」

   みゆき、お盆でコーヒーを持っていこうとする。その時、入り口から健二が元気に入ってくる。

健二 「マイド! おはようさん! (松山に気づいて)おお、マッチャマ電器。働いてるか?」
松山 「働こうと思ってる」

   すれ違い様に、みゆき、健二にも目線を送る。

健二 「(たじたじとしながら)…なんぼ払ろたらええのん?」
みゆき「また、今度」

   にっこり笑って出て行くみゆき。

健二 「知らんかった。みゆきちゃん、オレに惚れてんねや?」
真理子「惚れてないわ!」
健二 「けど、あの目ぇは、只事やないでおばさん。(さくらに)なぁ、惚れてるなぁ?」
さくら「残念ながら、惚れてない」
真理子「健二。あんた、大学は?」
健二 「そら行くわ。行くけど、その前にモーニングコーヒーもらおかと思て」
真理子「なにがモーニングコーヒーだよ。そういうことできるのは、社会人になって、きちんと働いてるヤツが言うこと。ね」
松山 「そうそう。健二君、働いた方がいいよ。働かないと辛いこと多いよ?」
真理子「大学生の本文はなんだか、あんた分かってる?」
健二 「わかってるがな、真理子おばさん。オレ、何年大学通ってると思ってンねん」
真理子「8年だろ。通いすぎなんだよ! 容子姉ちゃんも愚痴ってたよ。『あいつ、しばいたろかと毎年思う』って。『あのアホ、医学部気取りか』って」
健二 「なに、おばさんお袋に電話したん?」
真理子「かかってくるんだよ! あんたの母ちゃん、声でかいんだよ! 耳痛いんだよ!」
健二 「おばさんも、たいがい、声でかい」
春太郎「寝言もでかいんだよ」
真理子「そんなことないでしょう」
春太郎「寝てるからわからないんだよ」
真理子「あんたも寝てるでしょう?」
春太郎「毎回、飛び起きる」
さくら「しかも、すごくはっきり寝言いうのよね」
健二 「聞こえんの?」
さくら「隣の部屋でもはっきり聞こえる。夕べも言ってた」
春太郎「ああ、あれは久しぶりにギョッとした」
松山 「なんて言ってたの?」
さくら「確かね、『チキンラーメンは二分半がうまいんだよ!』って言ってた」
春太郎「文脈がわからなかったなあ」
真理子「そんなことどうでもいいの。健二、あんたは早く大学に…」
健二 「あ、オレちょっと便所」

   健二、トイレに消える。
   そこに飛び込んでくる竹下。何かから逃げているらしい。

竹下 「ゴメン、春先輩。ちょっと匿って」
春太郎「なんだ? どうしたタケ」
竹下 「追われてるんだ」
春太郎「誰に」
竹下 「奈々ちゃん」
春太郎「奈々ちゃんて、川原奈々?」
竹下 「そう」
春太郎「奈々ちゃんは、お前んところの経理だろう」
竹下 「そう」
春太郎「経営者がなんで逃げる」
竹下 「そうね」
真理子「なんだ、スーパー竹下でなんかやらかしたのか」
竹下 「まあ、そうなんだけど」
真理子「なにやった」
松山 「なにやったの、昭夫さん」
竹下 「おお、松山電器、いたのか」
松山 「いるよ」
竹下 「働け」
松山 「わかってるよ」
竹下 「あ、そうだ。健二君いない? 健二君」
真理子「健二は今、トイレ入ってる」
竹下 「ええ? そうなの?」
真理子「なに、健二にも用なの?」
竹下 「うん。奈々ちゃんは健二君にほれてるからさ、いなしてもらおうと思ったんだけど」

   そこに川原奈々が登場。キッサ店の前。

竹下 「やべ」

   カウンターの陰に隠れる竹下。
   奈々、ガラス越しに店内を覗く。が、竹下がいないことを確認して、通りすぎる。
   さくらが入り口に駆けて行って、扉を開けて奈々を呼ぶ。

さくら「奈々ちゃん! 奈々ちゃーん! 社長、ここ」
竹下 「ええっ! なんで!」

   奈々戻ってくる。

奈々 「社長!」

   カウンターの陰に隠れて震えている竹下。

奈々 「社長! 隠れてないで出てきなさい!」

   出ない竹下。

奈々 「カウンターの陰! わかってるのよ!」
竹下 「なんでわかるの?」
奈々 「さくらさんが指さしてるから」

   渋々出る竹下。

竹下 「さくらちゃん、どうしてだよ」
さくら「だって、面白いじゃん」

   そこにみゆきも戻ってくる。

みゆき「なんか面白そうな怒鳴り声が聞こえたんだけど」
さくら「あんた、耳いいね。その通りよ」

   様子をみて、みゆき。

みゆき「なんだか、修羅場が始まる予感」
さくら「多分ね」
奈々 「社長! ちょっとここに座ってください」
竹下 「はい」

   テーブル席に竹下を座らせる奈々。

春太郎「奈々ちゃん、何があったの」
奈々 「ちょうどいいです。みんながいるところで聞いてもらいましょう。ねっ! 社長!」
竹下 「はい」

…(続く)
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コメント 1

イ・とうしろう

松山でなくて「小山田」にして小山田電器」
山田電器はあんなに大きくなったのになんで「小」が付くだけで
こんなに違うんだ

みゆき「徹麻(てつまん)」 さくら「てつまんてなんのこと?」
みゆき「徹夜麻雀のこと」 さくら「ふーん」

みゆき「・・・腕のほうはたいしたことないんだけど・・・」
by イ・とうしろう (2012-01-10 21:54) 

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