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「肩たたき券はドコに消えた」台本紹介 [舞台]

シアターまあ恒例(といっても前回からですが)

導入部の台本を公開しちゃいます。


舞台は古いおもむきのスナックです。


   明かりはいると、そこはスナック「面細工(もざいく)」
   カウンターととまり木。その脇にシート席がワンセット置いてある。
   わりと年代を感じさせるスナックではある。
   カウンターには奥に入る出入り口がある。
   店の出入り口は上手。
   下手にはトイレの入り口もある。

   そこに入ってくる佳代。

佳代 「おたえ! おたえ! いないの?」

   反応がない。シートに座る佳代。

佳代 「ホントにいないのかな。おたえ!」

   奥から、妙子が入ってくる。

佳代 「なんだいるんじゃん」
妙子 「いるよ、自分の店なんだから」
佳代 「まだ外明かり入ってなかったよ」
妙子 「うそ、もうそんな時間?」

   佳代、時計を示す。

妙子 「ホントだ。もうこんな時間」

   妙子、入り口を一旦出て、再び入ってくる

佳代 「ホントに商売っ気ないんだから」
妙子 「なにこんな時間じゃない。ダンナと息子にご飯作らなくていいの?」
佳代 「今日はいいの。ダンナは出張。息子はバスケの合宿で帰って来ない」
妙子 「久々、主婦の休日ってわけか」
佳代 「そうだよ。あんたにはわからないのよ、主婦の大変さ」
妙子 「まあ、わかりたくもないけどね」
佳代 「好きで主婦以外の人生を選んだのはあんただからね」
妙子 「それにしても、いつも思うけど、あんたの方がよっぽどスナックのママみたいな声だよね」
佳代 「ほっとけ。声のことは、あんたもいえないじゃない」
妙子 「なんか飲む?」
佳代 「烏龍茶頂戴」
妙子 「あんたが飲めないってホント不思議」
佳代 「そっちもほっとけ」

   そこに弥生入ってくる。

弥生 「おはようございまーす」
妙子 「あ、弥生ちゃん。おはようって、ちょっと遅い」
弥生 「すいませーん。あ、佳代さんいらっしゃい」
佳代 「よっ」
弥生 「あいかわらず不良主婦ですね」
佳代 「言うじゃない。でも、今日はダンナも息子も家にいないんだから、不良じゃないよ」
妙子 「これ」
弥生 「はーい」

   弥生、烏龍茶を佳代にもっていく。

弥生 「どーぞ」
佳代 「弥生ちゃん。男できた?」
弥生 「なんですか急に」
佳代 「なんか、男出来たかなあって思って」
弥生 「どうやったら出来るんですか。この店にいて」
妙子 「なによ、どんな店だって言うのよ」
弥生 「だって、それなりの男が全然来ないじゃないですか。この店」
妙子 「それなりの男?」
弥生 「なんつーか、もう人生に疲れたような男ばかりで、若くて生きのいいのなんか来ませんもん」
佳代 「そーゆーもんじゃないの? スナックなんて」
妙子 「なによ、弥生ちゃん。うちの店に文句あるの?」
弥生 「ありませーん」
妙子 「ならよし」
弥生 「でも、前々から思ってるんですけど、この店って不思議ですよね」
佳代 「なにが?」
弥生 「普通、スナックっていえば、店のママさんや女の子目当てに、男の客がたくさんくるところでしょう?」
佳代 「そうか」
妙子 「まあ、そうね」
弥生 「なのに、この店、圧倒的に女性客が多い」
佳代 「妙子がおっとこ前だからじゃない?」
妙子 「誉めてんのか? それ」
佳代 「あんた、女学校時代から女の子に人気あったもんね」
妙子 「女学校って… あんた歳いくつなんだよ」
弥生 「なに、ママってそんなに女子に人気あったんですか?」
佳代 「そうだよぉ」
妙子 「あんただって、初めてもらったラブレターは女子からだったじゃない」
佳代 「あたしはテニス部のエースだったから、まあそういうこともあるわな。妙子は吹奏楽部だよ。普通、女子にキャーキャーはいわれない」
弥生 「にしても、この店は女性客が多いのは確か」

   そこに、まさみ、みはる入ってくる。

まさみ「ちーす」
みはる「こんにちは」
弥生 「ほら、また女だ」
妙子 「おや、まさみちゃんとみはるちゃん。店は休憩?」
まさみ「うん。昼キャバと夜キャバの間」
みはる「あたしは今日はこれであがりです」
まさみ「ママ、お水ちょうだい」
みはる「あたしも」
妙子 「最近はキャバクラも大変だね。昼も夜も営業なんてさ」
まさみ「まあ、夜だけの子はまだいいんだけどね。あたしみたいに昼も夜も出てる場合は途中で息抜きしないと」
みはる「まさみ先輩、頑張りますもんねえ」
弥生 「そりゃ、まさみさんには守るものがあるから、頑張らないと」
みはる「昼キャバやって、夜キャバやって、子供も育てるなんて、あたしにはとても無理だなあ」
まさみ「っていうか、子供がいるから頑張れるんだよ」
妙子 「店は? 忙しかったの?」
まさみ「また、昼の客が昼のクセにしつこくてさあ」
妙子 「誰」
まさみ「酒屋の親父」
妙子 「重三郎か」
まさみ「店外しよう店外しようって」
弥生 「店外って、店が終わったあとでしょう?」
まさみ「そうよ。夜の営業終わるの、何時だと思ってるんだよ。店外したかったら夜に来いっつーの」
弥生 「つきあってあげないの?」
まさみ「誰がつきあうか。あんなハゲ。一回なんか『店終わったら、寿司ご馳走するよ』なんて言うから真に受けたら、回転寿司」
弥生 「うっそ」
まさみ「店外で回転寿司は初めてだったよ」
妙子 「和夫、いくつになったんだっけ?」
まさみ「五才。可愛いんだ。さっきも急いでお昼食べさせてきた。そんで保育所連れて行って」
みはる「今度会わせてくださいよ」
まさみ「まあいいけどさ。あ、そうそう、妙子ママ、いいものみせてあげる」
妙子 「ナニナニ?」

   まさみ、財布の中から紙切れを出して、それを妙子に見せる。

妙子 「なにこれ」
まさみ「和くんがさっきあたしにくれたの」
妙子 「なんか書いてあるね。『かたたたきけん、いっかいごふん』
みはる「かわいい字」
まさみ「汚い字ともいうけどね」
弥生 「五才でもう、ひらがなかけるんですか。すごいですね」
佳代 「肩たたき券かあ、あたしも確か健二にもらったことあるなあ」
まさみ「佳代さんも?」
佳代 「正確に言うと、あたしの場合は『お手伝い券』だったけどね」
弥生 「使ったりしたんですか?」
佳代 「1回使ったかなあ」
みはる「子供って大抵アレ書きますよね。なんとか券」
妙子 「結局さあ、子供なんて財力がないから、なんかプレゼントするとしたら、そういうもんしかないのよ」
佳代 「あんた、昔からドライなんだから」
妙子 「ドライなんて言うけどさあ、あんただって今でもその券もってるわけじゃないでしょう?」
佳代 「どっか行っちゃった」
妙子 「あたしがドライなら、あんたはクールじゃない」
まさみ「お二人の昔話はおいといてさあ、うれしいじゃない。五才で肩たたき券だよ。あたしのお守り」
みはる「親って単純ですね」
まさみ「あんた書いたことないの?」
みはる「書きましたよ。確か」
佳代 「なに券だった?」
みはる「なに券だったかなあ。たしか、お風呂掃除券だったか、窓拭き券だったか」
弥生 「子供って色々考えるんだなあ」
妙子 「あんたは、なんか書いた?」
弥生 「覚えてないなあ」
佳代 「絶対書いてるはず。子供は誰でも一回は書くんだもん」
みはる「あれ、何なんですかね。誰に教わったわけでもないのに」

   そこに進入ってくる。

進  「ちーっす」
妙子 「あ、進くん、ご苦労さん」
弥生 「やっと男が来たと思ったら、進君か」
進  「ちっす。裏に酒運んどいたんで、ヨロシク」
妙子 「あ、ありがと」
進  「これ伝票ッス」

   妙子、進から伝票を受け取ってサインをする。

佳代 「進くんさあ」
進  「なんスか?」
佳代 「あんたさあ、親に肩たたき券って書いたことある?」
進  「肩たたき券? なんすかそれ」
佳代 「その券一枚ごとに、5分間肩たたきしてあげる券。親にプレゼントしたりした?」
進  「いやあ、そんなのねーなあ。だってそんな券なくても、バリバリ肩たたきさせられましたもん。母親も父親も。『子供なんだから、子供がそのくらいするのは当たり前だ』とか言っちゃって」
佳代 「そうか。そういう親子のありかたもあるか」
進  「厳しかったもんなあ。肩たたかなかったら、逆にオレが頭ぶたれちゃう」
まさみ「進!」
進  「あ、まさみさん」

   肩たたき券見せびらかして、

まさみ「ほら。これが肩たたき券だよ」

   進、手にとって見て、

進  「へえ。わあ、汚ったない字」

   まさみ、進のあたま叩いて、

進  「イテ」
まさみ「返せ」
進  「それを子供に渡すと、肩をたたいてもらえるンスか?」
まさみ「そういうこと」
進  「あ、まさみさん、店でもそういうの売り出せば?」
まさみ「そーゆーのって?」
進  「チケット一枚で、太ももを五分間もんでいいとか。太もも券とか。売れると思うなあ」
まさみ「なるほどいいかも。って売るか」
進  「売れないかな」
まさみ「あんた買うかい?」
進  「いくらですか?」
まさみ「一枚千円」
進  「そりゃ高い。ま、オレはみはるちゃんの太もも券なら二千円でも買うけど」
みはる「売らないっつーの」
進  「まさみさん。店、中休みですか」
まさみ「あんたんとこの親父さんに言っときな。店外店外うるさいって」
進  「え? うちのおやっさん?」
まさみ「そう、重三郎」
進  「おやっさん、また昼キャバ行ったんですか?」
まさみ「さっきまでいたよ」
進  「まじッスか! この忙しいのに」
まさみ「酒屋のおかみさん、知らないんだろ?」
進  「知ってるはずないですよ。さっきだって探してたんですから」
妙子 「そりゃホントのこと知ったら大変だ」

   その時、進の携帯が鳴る。
   進、出て。

進  「はい、あ、おかみさんスか。進ッス。え、親父さんですか? キャバクラ行ってたみたいッス」
妙子 「おい!」
進  「あ、いけねっ」

   進、慌てて携帯を切る。

妙子 「馬鹿だね、言ってるそばから」
進  「おかみさんの声聞くと、どうしても正直になっちゃうんだよなあオレ。どうしよう」
佳代 「切ったって、またかかってくるんじゃないの?」

   再び、進の携帯電話が鳴る。

佳代 「ほら来た」

   進、携帯の画面を見ながら、なかなか出ない。

弥生 「出ないの?」
進  「こわいッス」
弥生 「自業自得じゃないの」
進  「まさみさん。出て」
まさみ「あたしが出てどうすんのよ」
進  「店での親父さんの様子をレポートするとか」
まさみ「冗談」
進  「ともかく、オレ配達があるから、行きます」

   鳴り続ける携帯電話を持ったまま出て行く進。

弥生 「女将さんにもどやされて、親父さんにもどやされるなアレは」
妙子 「行くも地獄、帰るも地獄ってヤツだよ」
佳代 「一番どやされるのは重三郎のおっさんだろうけどね」

   そこに入ってくる、さとこ。

妙子 「ああ、いらっしゃい」
さとこ「妙子さん。うちのいない?」
妙子 「たかちゃん? まだ来てないね」
弥生 「ほーら、また女の人が来た」
さとこ「佳代さん、うちの見なかった?」
佳代 「つーか、店じゃないの?」
さとこ「それがまたバイトに店任せたまんま、どっかに消えちゃったのよ」
弥生 「コンビニって、これから忙しいんじゃないの?」
さとこ「そうなのよ。なのに、あの人はホントに廊下トンビなんだから」
妙子 「ホントにいい加減なヤツだよね」
さとこ「うちのコンビニが大手じゃないから、あの人も呑気なもんなのよ」
佳代 「それでやっていけるってのが、ある意味羨ましいわ」
さとこ「バイトが泣いてるのよ。『僕ひとりじゃ回りません』って」
妙子 「さとこちゃんが手伝ったら?」
さとこ「それが、もうすぐ夕飯の支度をしなくちゃならないし。おやじにご飯作ってあげないと。ここんところ店のコンビニ弁当ばかりになってるから、たまには作ってやらないとね」
まさみ「そうそう。食事だけは作ってやった方がいいよ」
さとこ「そうなの?」
まさみ「うちは、両親がいい加減だったからコンビニ弁当多かったし」
弥生 「そうなんだ」
まさみ「両親の愛に飢えてるっていうかさ? それで今では立派なキャバ嬢」

   そこに、勝男が入ってくる。

(続く)

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