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「肩たたき券はドコに消えた」台本~続き [舞台]

(続き)

勝男 「こんばんは!」

   大きな声。

弥生 「やっと男の客が来たかと思ったら、大声勝男かよ」
勝男 「ご挨拶だな。毎日のようにこの時間にくるだろ、オレ」
妙子 「あんたの大声が聞こえると『ああ、店が始まるんだ』って思うよ」
勝男 「妙子さん! いつものように、オレにノンアルコールビールを一つ!」
妙子 「仕事前に飲むのはあんたぐらいだよ」
勝男 「ノンアルコールだからいいでしょう」
佳代 「それにしても、あいかわらずでかい声だね」
勝男 「このでかい声があるから、塾でも評判がいいんだよ。オレだけだもん、塾でマイク使わないで教えてるの」
妙子 「アンタみたいに、高校時代たいしたことないヤツに教わってるヤツが不憫で仕方がないよ」
勝男 「オレがたいしたことなかったのは高校時代でしょう? オレが教えてくるのは、小学生だもん」
弥生 「はい、ビール」

   目の前のグラスを一気に半分ほど飲み干して、

勝男 「くわぁ! 染みるなあ! ノンアルコールビール最高! まさみ、お酌してくれる?」
まさみ「店に来な」
勝男 「先輩に、つれない返事じゃねえかよ」
弥生 「後輩がキャバ嬢になるってどんな感じなんだろう」
勝男 「しかも、生まれたところも隣同士」
みはる「え、隣同士だったの?」
まさみ「そ」
弥生 「不思議な関係だよね」
勝男 「まさみは、高校時代から『末はキャバクラ』って感じだったんだぜ」
まさみ「変なこと言うな」
弥生 「どういうこと?」
勝男 「テストの点が悪かったときにさ、先生をたらし込んで少しでも点数を上げようとしたりしてさ。うまかったよな」
まさみ「まあな。悪い点数もって帰ったら、お袋がうるさかったからだよ」
勝男 「まさみのお袋、怖かったもんなあ。オレ、平気でぶたれたもん」
まさみ「あんたが隣の家で声がでかすぎるからだよ。小さいアパートだから筒抜けでさ」
弥生 「どんなことどなってたの?」
まさみ「それが、くだらないから始末に終えない」
弥生 「くだらない?」
まさみ「『なんだよ! 糞が大きすぎて! 便所流れないんだけど!』飯時にだよ」
勝男 「でも、まあ、芸は身を助ける。先生を手玉にとってた方法で、今ではナンバーワンだろ?」
まさみ「まあな。でなきゃ、この歳でキャバやってないっつーの」
みはる「まさみさんの親父転がしは、一種達人の域ですもんね」

   そこに、次郎入ってくる。

次郎 「こんばんは」
妙子 「おっ、信用金庫」
次郎 「ちゃんと名前で呼んでくださいよ」
妙子 「悪い悪い、次郎ちゃん」
次郎 「今日は新しい子も連れてきたの。入れば?」

   奈美も入ってくる。

奈美 「どうも」
妙子 「いらっしゃい」
次郎 「島村奈美ちゃん」
奈美 「島村奈美です」
妙子 「ああ、そう。新しい子?」
佳代 「なに、信用金庫の新入社員?」
次郎 「新入社員というか、もう半年近くたつけど。このスナックの常連だっていったら、来てみたいって言うから、連れてきちゃった」
奈美 「よろしくお願いします」
次郎 「別に普通だろ? 喫茶店て言われりゃ喫茶店だし。定食屋って言われりゃ、定食屋だし」
佳代 「なんだいそりゃ」
妙子 「まあ、なんでもいいんだけどね」
奈美 「へえ、そうなんですね。これがスナックかあ」

   三人、とまり木に座る

次郎 「弥生ちゃん。いつものセット」
弥生 「はーい」
次郎 「紹介しよう。こちらがママの妙子さん」
妙子 「よろしく」
次郎 「店の女の子の弥生ちゃん」
弥生 「弥生です」
奈美 「初めまして」
次郎 「ママの昔からの友達の佳代さん」
佳代 「初めましてだよね」
次郎 「で、そこのコンビニの女将さんのさとこさん」
奈美 「あ、あたしよく行きます。あそこ」
さとこ「どうも」
次郎 「店大丈夫なの?」
さとこ「大丈夫じゃないから、見に来たんだよ」
次郎 「ああ、ダンナ張ってるんだ」
さとこ「そう」
次郎 「さとこさんのダンナの隆志さんてのも常連なんだけど、しょっちゅう店をさぼってるから、時々さとこさんが覗きにくるんだよ」
奈美 「へえ」
次郎 「そんでもって、あそこに座ってるのが、まさみとみはるちゃん。商売言ってもいい?」
まさみ「いいよ」
次郎 「キャバクラのキャバ嬢。まさみは、もう十年ぐらいやってるんだっけ?」
まさみ「十二年。ほっとけ」
次郎 「これで全部かな」
勝男 「おい!」
次郎 「あ、勝男、居たのか」
勝男 「目が合っただろうが! どうも!」
次郎 「声でかいだろう? 高田勝男。オレの高校大学の同級生」
勝男 「高田勝男です!」
奈美 「島村奈美です」
勝男 「奈美ちゃんか。奈美ちゃんは、この店に一番欠けてるものをもってる!」
次郎 「なんだよ」
勝男 「若さ!」

   女子たち、順番に『カッチーン』とつぶやく

勝男 「うわあ、完全アウェー」
妙子 「自業自得だっつーの」
次郎 「こう見えても、塾の先生なんだぜ。信じられないだろ」
勝男 「小学生のアイドルです」
妙子 「あんた、もうすぐ夜の授業始まるんじゃないの?」
勝男 「あ、ホントだ」

   勝男、残ってるビールを飲み干して、

勝男 「じゃあ今晩もかましてくる!」
奈美 「大丈夫なんですか」
勝男 「なにが!」
奈美 「これから塾なのに、ビールなんか呑んだりして」
勝男 「ノンアルコールビール! 妙子さん!」
妙子 「なんだい」
勝男 「ノンアルコールビールって、考えてみれば、我々塾講師のためのドリンクかもしれないね」
妙子 「絶対ちがうけどね」

   勝男、はけながら、

勝男 「では、行ってきまーす!」

   まさみも立ち上がって、

まさみ「あたしは店もどろうっと。(みはるに)あんたは?」
みはる「あたしも行く。夜から専門学校だし」
まさみ「あんたも大変だね」
みはる「じゃあ、またきまーす」

   まさみとみはるもはけていく。

弥生 「あーあ、また二人、注文無しだよ」
妙子 「いいんだよ。休憩所代わりにしてんだろ」
佳代 「商売っ気ないねえ」

   その頃には、次郎の前にはセットがそろっている。(焼酎とグラス、氷など)

妙子 「あなたは? ビール?」
奈美 「あ、あたしは焼酎ロックで行きます」
佳代 「おや、みかけによらず、行くのね」
奈美 「お酒、大好きなんです」
妙子 「気に入った。あたしの一番嫌いな言葉はね『とりあえずビール』ってやつなの」
奈美 「そうなんですか?」
妙子 「そうよ。『とりあえず』なんてビールは、うちには置いてないっつーの」
佳代 「お酒に失礼だっていうのよ。変わってるでしょう」
さとこ「ねえ、妙子さん。うちの人、来ないね」
妙子 「来るって。顔出さない日ないんだから」

   そこに入ってくる隆志。

妙子 「ほら来た」

   入ってくる隆志、そのままさとこに気づいてあわてて出ようとする。

さとこ「待ちなさい!」
隆志 「はい」
さとこ「ここに座って」

   さとこ、隆志をシートに座らせる。自分も座って、

次郎 「いいところに居合わせたね」
奈美 「なんなんですか?」
次郎 「スナック面細工名物、夫婦喧嘩」
奈美 「名物?」
妙子 「やなものが名物だよ」
さとこ「あんた、うちの商売は何なんだかわかってるわよね」
隆志 「そりゃあ、おめえ、コンビニじゃねえか」
さとこ「そうよ。正確に言うと、コンビニエンスストア、ね?」
隆志 「コンビニエンス、ストアだよ」
さとこ「確かにコンビニになる前は、町のたばこ屋だったよ」
隆志 「そうよ」
さとこ「たばこ屋にいるのは大抵おばちゃんだ。たばこ屋のおじちゃんなんてのはなかなかいない」
隆志 「そうだよ。オレの母ちゃんだって、たばこ屋のおばちゃんだったけど、親父はたばこ屋のおじちゃんとは言われてなかった」
さとこ「たばこ屋のおじちゃんなんてものは、たばこの煙みたいに、あっちへプカプカ、こっちへプカプカしてたって、商売はなんとなく成り立ってたもんさ」
隆志 「そうかな」
さとこ「そうでしょう。お父さんだって、隠居するまでプカプカしてたじゃない」
隆志 「そういわれればそうだな。つーか、隠居してもプカプカしてないか?」
さとこ「だからといって、たばこ屋からうちのたばこ屋に養子に入ったあんたもあっちへプカプカ、こっちへプカプカ、ノンビリ風のまにまに漂ってて良いわけじゃないの」
隆志 「そうだな」
さとこ「昔はね、世の中の大抵の男たちはタバコ吸ってたの。だから、ほとんどタバコだけでも生活が成り立ったの。でも、今の世の中、タバコを吸う人間はどんどん減る一方なんだ。だからコンビニに商売替えした。わかるよね」
隆志 「わかる」
さとこ「いーや。わかってない。うちはもう5年も前からコンビニなんだよ。コンビニってどういう意味か知ってる?」
隆志 「そりゃあ、お前、あのう、なんだ、ずーっと開いてるとかそういう意味じゃないの?」
さとこ「コンビニエンスってのは、便利って意味なんだよ」
隆志 「それを言おうと思ってたんだよ」
さとこ「うちは今、便利かい? レジの列にバーッとお客さんが並んでて、便利かい?」
隆志 「便利じゃない」
さとこ「不便だよ。じゃあ、コンビニじゃないじゃないか」
隆志 「じゃあ、なんていえばいいんだ?」
さとこ「え?」
隆志 「不便って、英語でなんて言うんだ?」

   さとこ、考え込んで、

さとこ「知らないよ」
奈美 「インコンビニエンスです」
さとこ「え?」
奈美 「不便は英語でインコンビニエンスです」
さとこ「だってさ」
隆志 「だったら、うちはインコンビニエンスストアか。略すとなんだ? インビニか?」
さとこ「インビニ? …そんなこと言ってるんじゃない! だいたいインビニなんて、そんな隠微な名前で商売がなりたつかい? 明るさが足りないだろう!」
隆志 「インビニ弁当…、インビニのおにぎり…、インビニにたむろする… 確かに、陰にこもった感じするな」
さとこ「余計なこと言ってないで、行くよ」

   さとこ、隆志の首根っこを捕まえて出て行く。

佳代 「ありゃ、相当しぼられるな」
弥生 「首根っこ捕まえるって言葉あるけど、ホントにやってる人はさとこさん以外みないわ」
次郎 「どう? スナックって、来てみて」
奈美 「面白いですね」
次郎 「あーゆー、夫婦喧嘩なんかも見られるところが、こーゆースナックのいいところなんだよ」
弥生 「あの夫婦はいつも喧嘩してるけどね」
次郎 「いいかい、我々信用金庫というのは、地元に密着してこその金融業なんだ。こうゆうところを見ておくのも、社外勉強としても大切なことだ」
奈美 「このお店にも融資してるんですか?」
次郎 「もちろんだよ。ねえ、ママ」
妙子 「いつもお世話になってます」
次郎 「オレなんか、もう十何年かの常連だもんね」
妙子 「そうねえ、次郎ちゃんの色々な姿を見てきたもんねえ」
奈美 「どんな姿を見てきたんですか?」
妙子 「大学時代から通ってたっけ?」
次郎 「そうね。まずは先輩に連れられて」
妙子 「それ以来、部活のラグビーで勝ってはここで宴会、負けてもここで残念会。勝男が居たからいつもうるさくてさあ」
次郎 「あいつは声がでかすぎるんだよ」
妙子 「恋愛してるのも見てきたし、失恋も知ってるし」
次郎 「哀しい過去ですよ」
奈美 「古賀次長、持てるんですね」
妙子 「持てるんじゃなくて、大抵次郎ちゃんの方からアタックしてるんだけどね」
弥生 「奈美ちゃんだっけ? あんたも気をつけた方がいいよ」
次郎 「そんなに誰彼かまわずアタックしたりしないよ」
妙子 「そうかな、天性のアタッカーだったと思うよ」
次郎 「そんなでもないって」
妙子 「あたしが覚えてるだけでもさあ、5人は居たよ」
次郎 「うそだよ」
妙子 「いつもこの店に連れてくるから、すぐわかる」
弥生 「あー、奈美ちゃんもやばーい」
次郎 「そんなんじゃないって。奈美ちゃん、勘違いするなよ」
奈美 「あ、はい。大丈夫です。あたし、つきあってる人いるし」
次郎 「えっ、そうなの?」
弥生 「あー、明らかに、あてがはずれたって顔してる」
次郎 「してないよ」

   ちょっと間があって

次郎 「奈美ちゃん」
奈美 「はい」
次郎 「そろそろ帰ろうか」
妙子 「おい!」
次郎 「はい」
妙子 「振られたからって、早すぎ」
次郎 「すいませーん」

   暗転


さてさて、ここからどんな物語が始まっていくのでしょうか。

それは舞台でのお楽しみに。

9月19日~23日 下北沢駅前劇場です。まだまだチケット余裕があります。当日券でもごらんになれます。

沢山の方々、いらしてくださ~い! 

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